米マサチューセッツ工科大学(MIT)のロバート・ランガー教授は、20年ほど前に組織工学を駆使しネズミの背中に人の耳を作製、再生医療の驚異を見せつけた。このほど、第1回テルモ国際賞(主催はテルモ科学技術振興財団)に選ばれ、来日した。日米の再生医療研究の現状や将来について聞いた。
――日本の再生医療研究をどう評価する。
「日本発の細胞シート工学やiPS細胞は再生医療分野にとって大きな発見で、世界をリードしている。米国では私たちが開発した生分解性物質の足場を使った組織工学が盛ん。やけど向けなどに製品化されている。肝臓や膵臓(すいぞう)、骨・軟骨、角膜や気管支などで臨床試験(治験)も始まっている。再生医療の市場規模は30億ドルになると考えられ、企業の投資意欲も盛んだ」
――完全な立体臓器は実現するのか。
「肝臓や腎臓などを立体構造で作るのにはいくつもの課題はある。足場となる物質を考える材料科学と細胞生物学の融合が欠かせない。長く細胞が働くためにも血管を導入することが重要で、そのための微細加工技術が必要となってくる」
(日経新聞 2012/8/6より引用)