政府は、体の様々な細胞になるiPS細胞を使った再生医療など先端医療技術を迅速に確立し産業化を促進するため、地域の枠に縛られずに特定の大学や研究機関、病院、企業が連携する「機関特区」を2015年度にも設ける。新しい薬や医療機器の製造・販売の承認手続きを短縮するなど薬事法上の規制を緩和したり、特別の研究予算措置を取ったりする方針だ。
特区制度創設により、大幅な輸入超過が続く医薬品や医療機器分野で新たな輸出製品を育てたい考え。10~15年かかるといわれる新薬創出を半分程度に短縮し、20年までには新たな再生医療製品や薬、医療機器を国外に輸出できる産業として育てることを目指す。
特区メンバーの選定や緩和する規制内容の詳細は13年に、内閣官房医療イノベーション推進室が厚生労働省などと協議して決める。再生医療や新規の抗がん剤、外科手術に使う医療用機器など25以上のテーマ別にチームを組む計画だ。
再生医療や難病治療薬などについての規制緩和では、最低限の安全性と有効性は確保し市販後も調査を継続することを条件に、臨床試験(治験)に必要な人数や期間を減らして早く患者が使えるようにするなどを想定。医師主導の治験を活性化するための財政支援や、産業化につながった際の税制優遇も目指す。
医師主導の治験は特定の医療機関内のみで認められているが、同じ特区チーム内の別の病院などでも可能にする。各地の施設が連携する機関特区なので、患者にとっても自宅に近い病院で治験に参加できる利点がある。
機関特区は行政区域を限定する特区制度と違い、1カ所に研究施設などを集約する必要がなく、全国に分散する優れた施設が参加できる。08年から始まった革新的な医薬品や医療機器を造る「スーパー特区」も機関特区の考え方でテーマ別チームをつくったが、当初描いた規制緩和も進まず、予算措置も一部に過ぎなかった。
(日経新聞 2012/7/24より引用)