国立国際医療研究センター研究所の佐伯久美子室長らやバイオベンチャーのディナベック(茨城県つくば市)は人の様々な組織に育つiPS細胞から脂肪の燃焼を促す「褐色脂肪細胞」の作製に成功した。新しいダイエット法や肥満治療薬の開発に役立つ。薬が効かない場合には移植治療の可能性もあるという。
褐色脂肪細胞は脂肪の分解を促す働きをする細胞。生後間もない体では見つかっているが、大人になると居場所がわからず、人の体から取り出す方法が見つかっていない。
研究チームはiPS細胞の9割以上が褐色脂肪細胞になる培養条件を見つけた。2段階に分けて約10日育てる。脂肪の消費を促す遺伝子が働いているのが特徴。脂肪をため込む通常の脂肪細胞の遺伝子は動いていない。別の万能細胞である胚性幹細胞(ES細胞)からも作れる。
褐色脂肪細胞をマウスに移植すると、空腹時の血中の中性脂肪の量は通常の2割に減った。油を与えても、普段ならば上がる中性脂肪の値がそのままだった。また血糖値は通常の約6割にとどまった。
(日経新聞 2012/7/10より引用)