様々な組織に育つiPS細胞ができる仕組みなどについて、米欧の有力研究者が新たな成果を相次いでまとめた。作製効率を高めたり、再生医療に適した細胞を選んだりするのに役立つ可能性がある。横浜市で開かれた国際幹細胞学会で発表した。
米マサチューセッツ工科大学のルドルフ・イェーニッシュ教授はiPS細胞ができる際、細胞内の遺伝子の働き方が段階的に変わることを見つけた。最初は複数の遺伝子がバラバラに働くが、後半はある程度規則的になっていくという。
特定の遺伝子群の働きが早い段階で活発になると、iPS細胞への変化が順調に進むことも分かった。この遺伝子群を目印にすれば、iPS細胞に変化しやすいかどうかを予測できる可能性があるとみている。
英エディンバラ大学の梶圭介グループリーダーらは、iPS細胞ができる過程に関与しているとみられる約1000の遺伝子を分析。途中で働きが大きく変わる2つの遺伝子を見つけ、これらを手がかりに、細胞は6つの段階をたどって変化することを明らかにした。どの道筋を進めばiPS細胞になりやすいかも突き止めた。
英ケンブリッジ大学のジョン・ガードン博士は細胞の初期化を妨げる要因となる物質を探索。細胞核の中で遺伝子が巻き付いているヒストンと呼ぶたんぱく質の一種「H2A」の可能性が高いと説明した。
(日経新聞 2012/6/18より引用)