米で治験成果、一方で企業撤退も体のさまざまな組織になれるヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使った再生医療の臨床試験(治験)で、「目の病気が良くなった」という初の成果が米国で報告された。
しかし症例数はわずかで、脊髄(せきずい)損傷の治験をしていた企業は経営上の理由で撤退。期待の高い再生医療だけに、実用化に向けて引き続き公的支援の必要性を指摘する声もある。
米アドバンスト・セル・テクノロジー(ACT)は1月、患者2人で視力の改善がみられたと発表した。「黄斑変性」(スタルガルト病)で治療を受けた50代女性は、目の前で手が動いているのが判別できる程度だったのが、視力表の文字をいくつか読めたといい、米メディアに「何年かぶりに針に糸を通してボタン付けができた」と喜びを語った。
また「加齢性黄斑変性」の70代女性も「腕時計を見たら時間がわかって驚いた」と話した。だが米紙ニューヨーク・タイムズによれば、70代女性は移植を受けていない方の目でも視力の改善がみられ、研究チームの責任者、カリフォルニア大学のスティーブン・シュワルツ医師は「プラセボ(偽薬)効果かもしれない」と慎重だ。
(朝日新聞2012/2/20より引用)