京都大iPS細胞研究所の井上治久准教授らのグループは、iPS細胞でアルツハイマー病患者の脳の神経細胞を再現し、発症のメカニズムを一部解明したと発表した。
21日付の米科学誌「セル・ステム・セル」オンライン版に掲載された。
再現した脳細胞の一部では、青魚に多く含まれ体に良いとされるドコサヘキサエン酸(DHA)などの投与の効果が確認され、研究が進めば、症状が顕著に現れる前に治療する「先制医療」につながると期待される。
グループは、遺伝性や、家族に患者のいない孤発性のアルツハイマー病の患者4人の皮膚細胞から、それぞれiPS細胞を作製、患者と同じ状態の脳の神経細胞を再現した。
作製した細胞を詳しく調べ、アルツハイマー病を引き起こすとされているタンパク質の断片「アミロイドベータ」の蓄積状況などを分析。4人のうち2人の細胞の一部で、神経細胞外に蓄積すると考えられていたアミロイドベータが、細胞内に蓄積していることを確認した。
これらの細胞に、アミロイドベータの産生阻害剤や、アルツハイマー病改善の可能性が指摘されていた低濃度のDHAを投与したところ、アミロイドベータの発生が一定程度抑えられ、細胞の死滅率が下がることを確認したという。
グループは「iPS細胞が病態の解明にも応用できることが示された。今後、アルツハイマー病の病態をさらに詳しく解明することで、先制医療の実現につなげたい」としている。
(産経新聞 2012/1/26より引用)