京都大iPS細胞研究所の高橋淳准教授(神経再生学)らのグループは24日、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った神経細胞をパーキンソン病のサルの脳に移植したところ、細胞は半年後も生き残り、神経が機能したと発表した。病気の原因となる神経細胞の減少を食い止められる可能性がある。ラットで同様の実験例はあるが、霊長類では初めて。人間への臨床試験に向けた重要なステップになる。オランダのパーキンソン病専門誌に掲載された。
パーキンソン病は、脳の神経細胞が減って神経伝達物質のドーパミンが不足し、手足が震えるなどの症状が起きる進行性の難病。国内に約14万人の患者がいる。薬で症状は改善するが、神経細胞の減少を食い止めることはできない。
研究グループはヒトiPS細胞から神経細胞になる前段階の細胞を培養し、パーキンソン病を発病させたカニクイザル(3歳、オス)の脳に移植。MRI(磁気共鳴画像化装置)などを使って観察したところ、半年後も移植細胞は生き残り、ドーパミンを分泌していた。
また、サルの行動をビデオ撮影して解析すると、運動量が約1割増加していた。ただ、移植したサルは1頭だけのため、症状の改善効果の有無を科学的に議論できる段階ではないという。
高橋准教授は「今後、実験の頭数を増やし、効果や安全性について調べたい」と話している。
(毎日新聞 2012/1/24より引用)