15年の投与開始目指す
京都大学の山中伸弥教授が開発した新型万能細胞(iPS細胞)を使う臨床試験(治験)に、同大と東京大学のグループが米国で乗り出す。iPS細胞から作った血小板を止血剤に使う。米食品医薬品局(FDA)と事前協議に入っており、2015年にも正式に治験を申請、投与を始める。先端医療の治験ノウハウが豊富な米国で効率良くデータを集め、早期の実用化を狙う。
治験を計画しているのは東大の中内啓光教授、京大の江藤浩之教授ら。ヒトのiPS細胞から大量に血小板を作る新技術を確立済みで、治験で安全性や有効性を調べ新薬の承認取得を急ぐ。
iPS細胞を使った病気治療は前例がなく、どのデータをどう評価して安全性などを判断するか手探りの状態だ。FDAは別の万能細胞による米社の治験を過去に認めており、iPS細胞でも審査内容は一部共通する見通し。このため研究グループは米国の方が国内よりも、迅速に治験を進められるとみている。
FDAとの事前協議では無駄なく治験計画を組めるよう、申請前に方法や必要なデータを詰める。日本にも同様の仕組みはあるが、新薬承認までの期間は米国よりもはるかに長い場合が多い。
中内教授らは12年3月に日米で出資を募り、治験を担う事業会社を設立する計画。将来、同社を通して血小板の商品化も目指す。血小板は手術時や出血性の病気の治療に不可欠だが、現在は献血に頼っている。iPS細胞から作った血小板なら、病気感染などの心配が減る。血小板製剤の市場規模は日米欧で約3300億円に達する。
(日経新聞 2012/1/4より引用)