厚生労働省のヒト幹細胞に関する専門調査会(委員長=永井良三・東京大大学院医学系研究科教授)は11日、さまざまな体の細胞になる能力を持つ胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)を、人の体内へ移植して病気の治療効果を確かめる臨床研究用に作成する際の指針策定へ向けた検討を始めた。必要となる安全性などについて今年度中に一定の考え方を示し、来年度以降の指針策定を目指す。
ES細胞は動物実験など基礎研究に関する指針しかない。米国で既に脊髄(せきずい)損傷などの臨床研究が始まり、国内でも計画があるため、こうした動きに対応するのが目的。
iPS細胞については、元になる細胞の提供者と移植を受ける人が決まっている場合の指針は昨年作られた。しかし、複数の人から提供を受けた細胞で作成して保管する「細胞バンク」の構想があり、こうした細胞が臨床研究に使われた場合、細胞に含まれる個人情報に当たる遺伝情報の扱いが複雑になる。そのため、新たな指針が必要と判断された。
この日の会合では、細胞提供者へのインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)の取り方や、移植された人が感染症などになった際に原因を調べられるよう、提供者を特定しておく仕組みの必要性について意見が出された。
(毎日新聞 2011/10/11より引用)