マウスの肝臓細胞に3種類の遺伝子を導入し、神経細胞に直接変えることに成功したと、米スタンフォード大の研究チームが9日までに米科学誌セル・ステムセルに発表した。同チームは昨年、同じ3種類の遺伝子をマウスの皮膚細胞に導入して神経細胞に変え、「誘導神経(iN)細胞」と名付けており、その後多数の研究チームがヒトで作製に成功。肝臓細胞からも作ることができたことで、技術の信頼性が高まった。
この3種類の遺伝子は、山中伸弥京都大教授らが、盛んに増殖し、多様な細胞に変わる万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作るのに使った4種類の遺伝子とは異なる。iN細胞は、iPS細胞のような幅広い応用性はないが、神経細胞以外の細胞に変わったり、がん化して増殖したりする危険性が低い可能性がある。脊髄損傷やパーキンソン病などの再生医療実現に向け、技術的な選択肢が広がった。
3種類の遺伝子は「Ascl1」と「Brn2」、「Myt1l」。同大チームが皮膚細胞を神経細胞に変えたと発表した際には、胚からの成長過程で、皮膚細胞に神経細胞の前段階の細胞が交ざっていたのではという批判があった。今回、全く系統が違う肝臓細胞を神経細胞に変えたことで、その批判を退けた。
さらに別の種類の細胞も神経細胞に変えられる可能性があり、再生医療や神経難病のメカニズム解明に使う上で、
材料として最も適切な細胞を探すという。
(時事通信 2011/10/9より引用)