女性から提供を受けた卵子に男性の皮膚細胞の核を移植して胚を作り、その内部細胞塊を採取、培養して胚性幹細胞(ES細胞)に似た万能細胞を生み出したと、米ニューヨーク幹細胞財団研究所やコロンビア大などの研究チームが6日付の英科学誌ネイチャーに発表した。卵子の核をあらかじめ抜いていないため、この万能細胞の染色体は正常な2組ではなく、3組あるという。
このままでは再生医療などに応用できないが、研究チームは核移植胚からのES細胞作製は実現可能で、皮膚細胞に遺伝子群を導入して作る万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」より優れていると主張している。卵子の核をあらかじめ抜いた後、皮膚細胞核を移植して染色体が正常な2組のクローン胚を作ることも試みたが、細胞の分裂増殖が途中で止まり、失敗した。
ヒトのクローン胚からES細胞を作る試みは、2004年に韓国のソウル大教授らが成功したと発表したが、うそと判明。山中伸弥京都大教授らが06年にマウス、07年にヒトでiPS細胞を開発してからは研究が下火になり、現在まで成功報告はない。
クローン胚からのES細胞作製は、材料の卵子を多数集めるのが難しいことも実現への障害となっている。今回、米研究チームは女性らに謝礼を支払って良質な卵子の提供を受けたが、こうした手段は日本では文部科学省が研究指針で禁止している。
(時事通信 2011/10/6より引用)