政府の総合科学技術会議は28日、生命倫理専門調査会を開き、ヒトの新型万能細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)から受精卵を作る研究を認めるかどうかについて議論を始めた。受精卵を作る研究は不妊の仕組み解明などにつながると期待される一方、倫理的な問題を抱える。調査会では生殖細胞を作る研究の動向を調べ、倫理上の課題について意見をまとめる。
精子などの生殖細胞を実験室で作る研究を巡っては、昨年5月に文部科学省が指針をまとめ、iPS細胞やES細胞から精子や卵子などを作ることが解禁された。ただ、作製した精子や卵子を使って受精卵を作ることは禁じている。
今年8月には京都大学の研究チームが、マウスのiPS細胞から精子のもとになる細胞を作り、体外受精でマウスを誕生させることに成功した。28日の調査会では、研究を率いた京大の斎藤通紀教授を招き、生殖細胞作製の現状や今後の展望について意見を聞く。
iPS細胞やES細胞を使ってヒトの生殖細胞を作ったという報告は現時点では無いが、この分野の研究は急速に進展しており、検討を急ぐことにした。調査会は今後も、発生学や生命倫理の専門家を招いて意見を聴取する予定。研究の動向を確認したうえで倫理上の課題を議論し、指針に反映させることを目指す。
受精卵を使った研究は不妊や先天性疾患の仕組み解明、治療法開発などの成果につながると期待される。一方で、作製した受精卵を体内に戻せば個体に成長する可能性があるため、実験材料として受精卵を取り扱うことには倫理的な問題がある。
(日経新聞 2011/9/28より引用)