腸の内側を覆い、食物の消化吸収などの役割を果たす「腸管上皮細胞」を大量に培養することに、慶応大とオランダ、スペインの共同研究グループが成功し、論文が4日付の英科学誌ネイチャー・メディシン電子版などに掲載された。
腸管上皮は再生の早い組織だが、重度の放射線障害やウイルスなどによる炎症性疾患では再生が間に合わず、機能障害を起こすことがある。成果は、培養した細胞を再び体内に戻す再生医療や、治療薬開発などへの応用が期待される。
慶応大医学部消化器内科の佐藤俊朗特任講師らの研究グループは、既にマウスの腸管から採取した組織に3種類の増殖因子を加えて培養することに成功していたが、ヒトではうまくいっていなかった。
そこで、ヒトの場合には3種類のほかに増殖因子が必要とみて、さまざまな物質を探索。その結果、Wntと呼ばれる腸の細胞の増殖因子、ビタミンB3の一種、ストレス反応に関連するたんぱく質p38の働きを抑える分子など4種類を特定し、腸管上皮細胞を培養することに初めて成功した。
培養した細胞には、消化吸収の働きや粘液を作り出すたんぱく質も存在しており、腸管上皮細胞としての機能も維持。腸管上皮細胞のもととなる「幹細胞」も含まれているため、内視鏡で一度組織を採取すれば、培養で半永続的に細胞を増やすことが可能だという。
(時事通信 2011/9/5より引用)