◇1年以上後発表
金沢大学(金沢市)が、国の承認を得ずにヒト幹細胞を用いた再生医療の研究を行い、厚生労働省の指摘で中止した問題を発表した22日の記者会見。同省の指摘から発表まで1年以上経過したことに対し、報道陣からは理由を問いただす声が相次いだ。同大の山本博・医薬保健研究域長は、「新たな体制や規定づくりに時間がかかった」と弁明した。
金沢大によると、昨年4月、同省から「倫理指針に抵触する」と指摘を受け、同月に研究を中止し、同12月に報告書を同省に提出した。研究で用いた細胞が、国の倫理指針で国の承認が必要な量のヒト幹細胞を含むとの認識がなく、指針についての理解不足だったことが原因と説明する。
厚労省の指摘後、指針の周知徹底や体制整備を進め、今年度からは新たに臨床研究を審査する倫理委員会を設置したり、倫理規定を見直すなどした。改善策の取り組みにめどが付いたため、発表したとしている。
金沢大は、「最先端の再生医療の研究であり、他の治療法では救えない患者に有効」とし、今後も国の評価を受けた上で、研究を再開する方針。
研究では、肝硬変や虚血性心不全の重症患者本人の腹部や尻から脂肪細胞を採り、再び注射やカテーテルを用いて患者の体内に戻した。患者の状態は順調という。
これらの疾病に対し、幹細胞を用いた治療法は国内では確立されておらず、「研究を進め、最先端医療に貢献したい」としている。
(毎日新聞 2011/7/23より引用)
金沢大学は22日、医薬保健研究域の金子周一教授(消化器内科学)の研究グループが、厚生労働省の指針に抵触し、同省の承認を受けないまま、幹細胞を使った臨床研究を肝硬変の患者らに行っていたと発表した。
同大は「指針に対応する罰則規定がないので処分は行わない」としている。
同省の指針では、幹細胞を用いた臨床研究は、厚労省に実施計画書を提出し、審査を受けると定められている。しかし、金沢大は計画書を提出せず、金子教授らは2009年2~12月にかけ、虚血性心不全と肝硬変の重症患者7人に対し、脂肪細胞に含まれる肝細胞を使った再生医療研究を行っていた。
記者会見に臨んだ金子教授は、「細胞に含まれる幹細胞はごくわずかなので、指針には抵触しないと考えた。理解が不十分だった」と釈明した。
同大は10年4月に厚労省の指摘を受け、11月に実施計画書を提出、承認に向けた手続きを進めている。また、12月には、改善策をまとめた最終報告書を厚労省に提出。改善策は、指針に関わるヒト幹細胞の臨床研究を主に審査する「臨床研究審査委員会」を新設することなどが柱で、今年6月までに審査態勢の強化を図った。
問題の発覚から公表までに1年以上経過しているが、この点について、同大は、「原因を精査して審査態勢を整備する必要があった」としている。
(読売新聞 2011/7/23より引用)