ヒトの万能細胞である人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)に3種類の遺伝子を導入し、これまでよりも早く効率的に肝細胞を作ることに、独立行政法人「医薬基盤研究所」(大阪府茨木市)の研究グループが成功したことが8日、分かった。成功率は8割といい、11日から横浜で開かれる日本トキシコロジー学会で発表する。
成功したのは、同研究所のチーフプロジェクトリーダー水口裕之大阪大教授らのグループ。水口教授は「従来の分化方法では数週間から2カ月かかる上、2~3割程度しか肝細胞にならなかったが、この技術なら常に3週間程度で分化が可能。成功率も8割」と話し、来年中の実用化を目指す。
研究グループは、iPS細胞やES細胞から肝細胞へ分化していく3段階でそれぞれ発現する遺伝子に着目。改良した病原性のないウイルスを使い、3種類の遺伝子を細胞内に導入した。
その結果、分化した細胞の約8割が、肝臓で生成される「アルブミン」を発現。肝臓に障害を引き起こすため市場から撤退した薬を分化した細胞に振りかけたところ、ヒト肝細胞と同様に死滅した。
肝臓には大半の薬を分解する働きがあり、創薬研究では肝細胞を使った検査が欠かせない。製薬会社は、ヒトから提供された肝細胞を米国から輸入して使うなどしているが、手に入りにくく高価な上、細胞の働きにばらつきがあるなど問題があった。水口教授は「今回の手法が実用化されれば、安価で安定的に質のそろった肝細胞を供給できる」と話している。
(時事通信 2011/7/19より引用)