国立成育医療研究センターの梅沢明弘再生医療センター長らは、ヒトの新型万能細胞(iPS細胞)で「メチル化」と呼ぶ遺伝子調節機能の異常が起きる仕組みを明らかにした。メチル化はすべての細胞で一様には起きないと判明。もとの細胞のメチル化は、そこから作ったiPS細胞には引き継がれないことも分かった。再生医療に必要な安全なiPS細胞作りなどに役立つ成果だ。
米科学誌プロス・ジェネティクス(電子版)に掲載された。研究チームはヒトの羊膜や月経血、子宮内膜などの細胞からiPS細胞を22個作り2万7000箇所のメチル化を約1年間追跡した。
iPS細胞の生成直後から異常なメチル化が数多く発生したが、培養を続けるうちに減った。メチル化の程度や進み方は細胞ごとにばらばらだった。米ソーク研究所などはiPS細胞のメチル化は特定箇所で起きていると報告。しかし今回の観察ではそうした箇所はなく反対の結論になった。
またiPS細胞はもととなった細胞の性質を一部引き継いでいる可能性が指摘されている。しかしメチル化に関してはそうした「記憶」は見せかけで、実際には性質の引き継ぎはなかった。メチル化はがん細胞の発生などにも関係し注目されている。
(日経新聞 2011/6/20より引用)