国際化学物質安全性カード(ICSC)について
−Descriptive Note −

(この文章は、国際労働機関が提供している英語版ICSCページに記載されている説明Descriptive Noteを翻訳したものです。)


 ICSC(国際化学物質安全性カード)プロジェクトはIPCS(国際化学物質安全性計画)の事業で、IPCS及びEC委員会の協力の下に進められている。

 IPCSはWHO(世界保健機関)、UNEP(国連環境計画)、ILO(国際労働機関)の共同事業であり、その主たる目的は、化学物質が人の健康及び環境に与える危害を評価しその情報を提供することである。

ICSCとは何か? 対象は誰か?
 ICSCは、工場、農業、建設業、その他の作業場で労働者や雇用者が使用する化学物質の健康や安全に関する重要な情報を簡潔にまとめたものである。

ICSCは法的な拘束力を持つ文書ではないが、国際的に認められた専門家達が健康や安全性に関する情報を収集、検証し、詳細に検討してまとめた標準語句から成り立っている。ここでは製造業や中毒センターの意見等も考慮されている。

ICSCはわかりやすいか?
 本カード及びその記載情報は、基本的にある特定の化学物質によってもたらされる固有の危害に係わる。その先のリスクはその物質がどのように使われるかでさまざまに変わる。本カードは、想定される数多くの作業条件で起こり得るすべての問題を扱ったり、個々の物質を使用する際に必要なすべての詳細情報を提供することはできない。

 しかしながら、本カードは労働者に彼らが使用する化学物質の性質に関する情報を提供する基本的手段となっている。また、主に雇用者が行う労働者のトレーニング用にも有用であり、さらに開発途上地域や中小企業においては管理面及び労働者双方からみて主要な情報源となり得る。

ICSCでは化学物質はどのように特定されているか?
 本カードにおける化学物質の特定は、UN番号、CAS番号、RTECS番号(NIOSH:米国国立労働安全衛生研究所)に基づいている。

ICSCは化学物質を分類する手段か?
 ICSCプロジェクトは新たに化学物質の分類を生み出すことは意図しておらず、既存の分類を参照している。例えば、国連危険物輸送専門家委員会による分類番号が存在する場合はそれらをカード上に記載している。また各国レベルの情報を入れられるようなスペースを設けている。

ICSCは信頼性があるか?
 ICSCはさまざまな国の担当機関(PI)によって作成され、いくつかの協議・編集段階を経ている。添付のフローチャート(http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/cis/products/icsc/dtasht/ipcsflct.htm)のように工業界や中毒センターにもコメントをもとめている。最終段階として国際的な専門家グループによって詳細に検討されているが、この最終段階は非常に重要なものである。これは国、地方、各専門分野で作成される他の情報パッケージと比較して大きな強みと信じられている。化学物質製造業者や被雇用者・労働者の協会代表などが検討会議のオブザーバーとして招かれている。各国の法規制をICSCに追加することも可能であり、そのためのスペースもある。

カード作成作業の程度
 今後6年間で約2,000カードの作成を目指している。化学物質の安全性が専門のIPCS担当機関の十分な支援や欧州連合との協力により、年に350カード(15担当機関が年に25カードづつ作成するとすれば)の作成が可能である。

ICSCとMSDS
 ICSC及び製造業者の安全データシート(SDS)もしくは製品安全データシート(MSDS)の各種項目には大きな類似性がある。しかしICSCとMSDSは同じではない。MSDSは多くの場合、仕事場での使用には専門的に非常に複雑であったり広範囲すぎることがある。またMSDSはマネージメント用のドキュメントである。これに対しICSCは、より簡潔かつ簡単な様式で詳細に検討された物質情報を提供するものである。ICSCは法的拘束力を持つドキュメントではないが、WHO/ILO/UNEPから提供されている権威あるドキュメントである。

 但しこのことは、仕事場で使われる化学物質やその性質あるいは作業現場におけるリスクについて労働者に伝える管理上の責任を担うMSDSとICSCが置き換えられ得るということではない。

 実際のところ、ICSCとMSDSはお互い相補うものであり、危害の伝達のためのこれら2つの方法が一緒になれば、労働者が入手できる知識量は倍増するであろう。ICSCは化学物質の安全性情報を労働者に伝えるモデルとなり得る。

カードの普及
 ICSCはECから入手可能であり、また翻訳版は各国の公的機関を通じて入手できるようになっている。米国労働安全衛生研究所(NIOSH)ではwebページ(http://www.cdc.gov/niosh/ipcs/icstart.html)を提供している。この文章はこのNIOSHのサイトからとったものである。


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